第九夜 ラベルが語るもの
焼酎にも、顔がある。お湯割りを飲みながら、近頃そんなことを考える。 カウンターに並ぶ焼酎のラベルの中に、いろんな顔が見えてくる。
華やかな顔。淡白な顔。 気取った顔。素朴な顔。 新しい顔。昔ながらの顔…。
伊佐錦のラベルの文字は、鹿児島県大口地方(現:伊佐市)出身の歴史小説家である海音寺潮五郎氏の筆によるもの。2001年(平成13年)は、海音寺氏生誕百年の年でもある。
「薩摩の焼酎は、日本一、いな世界一である。その薩摩焼酎の中で伊佐郡の焼酎を最上とするとは、鹿児島県内の定評である。僕のふるさとの焼酎なのである」
そんな讃辞と共に贈られたラベルの文字。技巧に頼らない、悠然とした筆使いが、この焼酎の性格のすべてを物語っている。おいしいイモは、いい顔をしている。